「あの人は何処」とお前に問う。
「知らない」とお前は応える。風にそよぐ葉ずれの音で。
嘘をおつき。知っているはずだよ。
あの人の身に纏う衣が微かに擦れるのを、密やかな足音を。
あまやかな吐息をお前は感じたはずだ。
「知らない」。お前はまた繰り返す。ひらひらたゆむ梢で。
あの人の歩みを止めることかなわぬのなら、お前の存在意義はない。
私の行く手を阻むのはよすがいい。
打ち据えた手にあっけなくお前はくずおれる。舞い散る薄紅色の花弁に悲鳴をのせて。
土の上に倒れるお前に絡むのは、一筋のあの人の髪。あの人の香り。
ほぅらやっぱり知っている。
重みをかけた私の足の下で、お前は最後の声をあげた。 ぱきん。
唐突に時々書きたくなる駄文。原稿逃避とも言う。
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